関心を表出する技術

現代のウェブを発展させるうえで欠かせない要素は何か、といえば私は「関心(interest)」であると答える。ウェブは当初、単なるドキュメントのネットワークでしかなかったが、そこに検索エンジンやソーシャルウェブサービスが備わることでハイパーリンクを通じた関心のネットワークへと変貌した。ウェブという分散システムにとって関心はユーザーに内部リンクを貼らせる餌である。ユーザーにとってみれば、このような関心を持つ他のユーザーへと出会えるという期待がウェブにあるから使うのである。

しかしながら、ユーザーに関心を表出させる技術は現状ではまだまだ未発達である。当初のウェブではハイパーテキストの発信が関心の表出の唯一の技術だったが、この方法はユーザーの表現能力と技術力に強く依存しており、万人向けではない。次に登場した検索サービスは、ユーザーに関心をクエリという形で表出させ、類似の関心によって表現されたと思われるハイパーテキストを提示することで敷居を下げた。しかしそれでも、ユーザーの表現能力に依存しているという点では変わらなかった。その後、ウェブ2.0の宣言のもとでユーザー参加型のウェブサービスが主流のウェブサービスになるに伴い、ソーシャルブックマークへの追加やリツイート、いいね!ボタンといったごく最小限の行動によってユーザーに関心を表出させるようになった。

今までの関心表出技術は基本的にユーザーに求める能力水準を引き下げるという方向で進化してきた。その点では、現在のウェブは格段に関心を表出させやすくなった。しかし果たして、その方向性はユーザーにとって良い効果をもたらすのだろうか?私はこの問いには否定的である。ユーザーの関心は単一的なものではなく、複雑な体系を秘めており、その体系の表出を支援する技術がいまのウェブには足りないのである。